有珠、善光寺を訪ねる。

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有珠は特別に美しい場所ではないかと思う。その入江の更に入江状の山間にスッポリと収まるように佇むのは北海道の蝦夷三官寺で現存する有珠の善光寺。よくぞここに!という場所に適切に建築されている。その二つの屋根は特徴的で、今では手入れも大変だろう茅葺屋根はその端部で緩く跳ね上がり荘厳さ、華麗でもある。傾斜部分にもムクリがあり柔らかく、山間の風景と相まって実に優し気、いつも温かく迎えて下さるお寺だ。

近所に来ているらしい台風は有珠の入江の、洞爺湖が波立っている時でも鏡面の如く静寂な海を波立たせている程だった。お寺は玄関の扉も障子も閉じ、その風に耐える様。

 

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何時もは開かれ中の様子も伺える事から誘われる様に楽しむ空間が、障子を閉じた時にはどう見えるのか?室内は外の強風に反して静寂の美しい光景が展開していた。

建築自身は傷んでいないとは言えない。どこもかしも管理される方にすれば悩ましいに違いないだけ十分に古びている。数年前にメンテナンスされた屋根はとても綺麗だけれど、骨組みは竹と縄でもあるし、今もこうして訪ね感じられる空間を保持佐連ている事に感謝すべきと思う。誰の為でもなく、こんな強風の日でも花が飾られている。その日に舞い込んだ落葉以外には塵もない室内が素晴らしい。今も開基時に求められた”品”を失う事がない。