エスキース、「計画」における設計作業を数回に渡り
載せてきた。今後具体的に設計を進める際は、この
作業を繰り返し、方針を探り定め、線や寸法を正し、
徐々にカタチを得て行く事になる。
今回案内したのは前段階、敷地の印象を確認する作業。
空間を得るための過程を改めて解析をしたい。
敷地は中央、画面上が北、下が南。右手が東、左が西。
影を帯びる線は等高線、これは200mm段差としている。
なだらかな丘陵、南東には急斜面の崖がある。
現地では周囲、隣地の建築は僅かで比較的距離もある。
道路は敷地の西側と南側にある。
敷地内は南側道路際に数多くある。
眺望は東南東の方向が優れる。
北側は隣地建築がややあり、将来はさらに建つだろうか。
東側にも建築される可能性はあり弱肯定的方位。
南側は距離があるものの既に建築が建つ。
どの方向に開こうか、閉じようか。
プライバシーの確保、周囲からの見え方見せ方、
何より、どこにどう住まおうか。
広い敷地で丘陵地、心地よくないわけがない。
訪ねた陽が初夏で晴天なら、原っぱの真ん中で佇み、
昼寝でもしてしまうかもしれない。
そういう敷地環境だった。
ただ、夜の寒さ、風の強い日、雨や雪、曇りもある。
そういう日常においても安心できるシェルターとして
建築を考える必要がある。
心地良さは建築よりも敷地の個性を活かすのが良い。
守られる空間を考えるにも同じなのだけれど、
与えられた敷地の中に見出せない事は少なくない。
【DOMA/道南の家】の設計過程を以前に書いた。
DOMA 設計STORYにて紹介をしている。
この時の敷地は実に恵まれていた。どこまでも広く、
眺望に長け、ほぼ誰にも覗かれない環境だった。
しかしながら、あまりに開けた場所は怖さがある。
木でもあり寄り掛かれるなら安心出来るのに。
寄り添える、取り掛かりの手掛かりのない場所は
設計においても困惑してしまう。
敷地のみを「空地」とみて建ててしまう建築が
世の中には多い。農村で見る住宅などその典型だ。
畑作風景の雄大な景色の中に突然、日常の普通の
家が建っていたりするのが北海道では多く見られる。
無理やり築く方法もあるけれど、それは避けたい。
敷地を活かし、良さを建築に取り込みたい。
そこで、先ず試したいのは「きっかけ」を与える事。
エスキースにおいて先ず、『壁』を立て考えてみた。
或いは「木」を植えるかの如く、拠り所を探る作業。
住まう空間を考えるにしても、家ありき、ではない。
スタートを間違えると敷地に呼応出来ず景観に成り得ない。
初段階でのエスキース、まだ洗練はしていない。
計画が進捗するなら馴染む様を模索する事になる。
家ありきなら問答無用に大きな建築が建ってしまう。
敷地を活かす事を考えるなら、敷地以外の周囲へも
配慮が欠かせないし、敷地の内に居ても外にあっても、
より心地良いスケールを求め探るのが計画。
ある意味では公園や遊園の地を作るかの如くの作業。
一枚目の無垢の敷地に対し、壁の並ぶ敷地は何処かしか、
拠り所を探せるのではと思う。晴れの暖かい日のみならず、
風の強い日にはここで、雨が降ればここに屋根を掛け、
そういう日常の場、守られる空間もイメージ出来ると思う。
人の動く水平面を仮定する。これで建築が視覚化出来る。
部屋の大きさや数が優先される建築、一般的な建築では
合理的、効率的、利便性が直ぐに描かれるので、
敷地の個性を実感する事よりも空白の自由さが優先される。
本当は、ここに至る前に【計画⑤】に示したように、
幾つもの思案をした末ではある。
活動空間をイメージしてみると、加えた円形とは
【計画④】で記しているもの、どこで何をしようか?
という思索を絵にしている。
当初の敷地を見た際に得た条件、眺望や方位、周囲の環境を
考慮し、どう個性を活かせば良好な建築環境を得られるのか?
その一案。
多くの場合、予算という別次元の制限が働く。その条件に沿い、
無理の出来ない事は常になるのだけれど、最初は出来る限り、
良さを消さずに活かす事、取り込む込む事を意図したい。
これ無しでは設計者は不要になってしまう現実もある。
ここでは更にアプローチにも考えが及んでいる。
空間体験のシークエンス、動線の検討になる。
どこからアクセスし、どの様に空間体験を経て導かれ、
どこに至るか。どこで寛ぐか、楽しむか、過ごすのか。
建物を森の中に隠せる程の余裕はない。
アクセス道路から見えない事は出来ないものの、
自然豊かな地に要塞を築く様では相応しくはなく、
低く抑えた壁を使いゆるりと領域を示す。
その壁を越えて敷地に入った際には全景は見せない。
更に奥の壁を潜り、丘陵に沿い登り、振り返ると、
眺望に出会える空間を用意する空間の物語。
実現に向けて進む機会を切望する。
※この記事一覧は下記。
【計画①】 傾斜地で等高線を創作する。
【計画②】 Site Survey
【計画③】 敷地3Dモデル。
【計画④】エスキース
【計画⑤】エスキース
【計画⑥】エスキースからの暫定プレゼンテーション