【計画⑦】過程

エスキース、「計画」における設計作業を数回に渡り
載せてきた。今後具体的に設計を進める際は、この
作業を繰り返し、方針を探り定め、線や寸法を正し、
徐々にカタチを得て行く事になる。

今回案内したのは前段階、敷地の印象を確認する作業。
空間を得るための過程を改めて解析をしたい。

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敷地は中央、画面上が北、下が南。右手が東、左が西。
影を帯びる線は等高線、これは200mm段差としている。
なだらかな丘陵、南東には急斜面の崖がある。
現地では周囲、隣地の建築は僅かで比較的距離もある。
道路は敷地の西側と南側にある。
敷地内は南側道路際に数多くある。
眺望は東南東の方向が優れる。
北側は隣地建築がややあり、将来はさらに建つだろうか。
東側にも建築される可能性はあり弱肯定的方位。
南側は距離があるものの既に建築が建つ。

どの方向に開こうか、閉じようか。
プライバシーの確保、周囲からの見え方見せ方、
何より、どこにどう住まおうか。

広い敷地で丘陵地、心地よくないわけがない。
訪ねた陽が初夏で晴天なら、原っぱの真ん中で佇み、
昼寝でもしてしまうかもしれない。
そういう敷地環境だった。

ただ、夜の寒さ、風の強い日、雨や雪、曇りもある。
そういう日常においても安心できるシェルターとして
建築を考える必要がある。

心地良さは建築よりも敷地の個性を活かすのが良い。
守られる空間を考えるにも同じなのだけれど、
与えられた敷地の中に見出せない事は少なくない。

【DOMA/道南の家】の設計過程を以前に書いた。
DOMA 設計STORYにて紹介をしている。
この時の敷地は実に恵まれていた。どこまでも広く、
眺望に長け、ほぼ誰にも覗かれない環境だった。
しかしながら、あまりに開けた場所は怖さがある。
木でもあり寄り掛かれるなら安心出来るのに。
寄り添える、取り掛かりの手掛かりのない場所は
設計においても困惑してしまう。

敷地のみを「空地」とみて建ててしまう建築が
世の中には多い。農村で見る住宅などその典型だ。
畑作風景の雄大な景色の中に突然、日常の普通の
家が建っていたりするのが北海道では多く見られる。

無理やり築く方法もあるけれど、それは避けたい。
敷地を活かし、良さを建築に取り込みたい。
そこで、先ず試したいのは「きっかけ」を与える事。

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エスキースにおいて先ず、『壁』を立て考えてみた。
或いは「木」を植えるかの如く、拠り所を探る作業。
住まう空間を考えるにしても、家ありき、ではない。
スタートを間違えると敷地に呼応出来ず景観に成り得ない。

初段階でのエスキース、まだ洗練はしていない。
計画が進捗するなら馴染む様を模索する事になる。
家ありきなら問答無用に大きな建築が建ってしまう。
敷地を活かす事を考えるなら、敷地以外の周囲へも
配慮が欠かせないし、敷地の内に居ても外にあっても、
より心地良いスケールを求め探るのが計画。

ある意味では公園や遊園の地を作るかの如くの作業。
一枚目の無垢の敷地に対し、壁の並ぶ敷地は何処かしか、
拠り所を探せるのではと思う。晴れの暖かい日のみならず、
風の強い日にはここで、雨が降ればここに屋根を掛け、
そういう日常の場、守られる空間もイメージ出来ると思う。

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人の動く水平面を仮定する。これで建築が視覚化出来る。
部屋の大きさや数が優先される建築、一般的な建築では
合理的、効率的、利便性が直ぐに描かれるので、
敷地の個性を実感する事よりも空白の自由さが優先される。

本当は、ここに至る前に【計画⑤】に示したように、
幾つもの思案をした末ではある。

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活動空間をイメージしてみると、加えた円形とは
【計画④】で記しているもの、どこで何をしようか?
という思索を絵にしている。

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当初の敷地を見た際に得た条件、眺望や方位、周囲の環境を
考慮し、どう個性を活かせば良好な建築環境を得られるのか?
その一案。

多くの場合、予算という別次元の制限が働く。その条件に沿い、
無理の出来ない事は常になるのだけれど、最初は出来る限り、
良さを消さずに活かす事、取り込む込む事を意図したい。
これ無しでは設計者は不要になってしまう現実もある。

ここでは更にアプローチにも考えが及んでいる。
空間体験のシークエンス、動線の検討になる。
どこからアクセスし、どの様に空間体験を経て導かれ、
どこに至るか。どこで寛ぐか、楽しむか、過ごすのか。

建物を森の中に隠せる程の余裕はない。
アクセス道路から見えない事は出来ないものの、
自然豊かな地に要塞を築く様では相応しくはなく、
低く抑えた壁を使いゆるりと領域を示す。
その壁を越えて敷地に入った際には全景は見せない。
更に奥の壁を潜り、丘陵に沿い登り、振り返ると、
眺望に出会える空間を用意する空間の物語。

実現に向けて進む機会を切望する。



※この記事一覧は下記。

【計画①】 傾斜地で等高線を創作する。
【計画②】 Site Survey
【計画③】 敷地3Dモデル。
【計画④】エスキース
【計画⑤】エスキース
【計画⑥】エスキースからの暫定プレゼンテーション