夜明け前の海、太平洋は好きだ。

去年の10月末に訪ねた際に撮った写真が忘れられない。
きっと近所なら、水源地を訪ねる様に空模様を眺め期待が過れば通うだろう。連休はあれこれとあり、けれどふと夜更けに行ってみた。

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天候は優れず小雨交じりの中の暗闇、構えたカメラが何処を向いて何を捉えているのかわからない。低感度にして30秒、海に向けて露光する。押し寄せる波が遠くの街の灯を浴び僅かに輝いた、30秒間の軌跡が映る。空は白み始めるものの南の水平線際は未だ漆黒の闇。波先の水滴がきっと街の灯を受け小さく光り、その幾つかが重なり綿菓子の様に霞んで見える。写っては居るけれど既にその場に実存はない。白い靄は波の痕跡。

f:id:N-Tanabe:20200727025154j:plain突き出た半島、その先は闇。太平洋は波荒く浜には様々が打ち上げられていた、と思う。暗いので良く見えないし。波打ち際だけは良く確かめ、さらわれない様には気を付けた。夜の海辺は怖い。

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反対側の半島は闇の中に未だある。白む空と未だ暗い浜、遠くの暗い空と明るい波、双方様々な陰影の対比が写る。


遠くにイカ釣り船の灯りでもあれば物語になるのに、今はもう漁にも出ないのかもしれない。ただ、暗い闇が遠くに広がる。雨が降っていたのでレンズも濡れる。何枚も撮れないので撮れた3枚を。大学は4年間を海のある街で過ごした。海、いいなー

人の目にはどこまでも奥へ続く暗闇、僅かに小さく輝く波先、その光に誘われる。街灯に集う虫みたいだけれど、気になって仕方がない。空間の広がりに興味惹かれる。