くしゃみ !!

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平面詳細図、部分のみを載せる。ここに至るまでの過程、その労力、未だ完成に至らず。完成は現実には現場で監理の際に、となるだろう。その時に思慮できる猶予を実施設計では残すべく取り組む。ギリギリに切り詰めた上で現場で何とか出来るコストを確保しつつ、最適を模索する作業が「実施設計」に違いない。設計の第1ステージである「計画」は規模内容の策定、第2ステージの「実施設計」は詳細な設計を果たすのが業務、それは予算獲得の仕様決定が目的になる。この段階でディテールの全てが決定しているわけではない。わけではないものの、全てがデタラメでは現場は混乱してしまう。チリ一つ狂い出せばトンでも無い。「こう納められる。」と言う確信を得られるだけ十分に吟味した詳細図を描く。

今は図面はCAD、3Dも並走したり仕様等属性を与えたりも可能だけれど、『建築は人が造る。』のが現実だ。人を動かすには『気持ち』を込める必要がある。随分と科学的な主張ではないものの、この誰しもが描けてしまう実施図面において『気持ち』を残せるかが設計者の技量になる。残さぬ図面がこの世の多勢であるのが現実だけれど、私は残したい。これまで、その残した『気持ち』を察する事の出来る施工者に出会ってきた。

良い建築を得るのは、そこからが勝負になる。気持ちがなく、汲み取る気持ちを見出せない図面では「建築行為」に夢を見出す事は不可能になる。実施図面は詳細までを記す図面で建築する全てが表現されている故に見積もりが可能になる。として施工者が数値で全てを置き換える事を可能にして尚、『謎』を残すためにどれだけ懸命に取り組めるか?

今、真っ只中だ。

気が抜け、卒なく、果たすべき内容記述に徹してしまうと、それは業務に成り果て『気持ち』が導く『謎』を記す事が出来ない。魅力か魅惑かのない、惚れるか気になるか、をどう残すか!?

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同時進行でディテール深度を深めて行く。平面と断面は同時に進行するので、相違なく何を造るのかを示すべく実施図面に取り組む。この段階では構造設計や機械設備設計とは協議も進み、要求も反映する。ディテールはmm単位で調整を計る。油断すると数ミリのズレが生じていたりする。それがそのまま実現されてしまえば間違っている様にしか見えない。意図せず生じたズレは現場で調整が不可能な事態に追い込まれ、諦める事に繋がる。それは余りに残念なことだ。求めすぎた結果、達成できずに整わないのだから。


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この住宅の様に床レベルがスキップする上に水廻りやドマを含め複数がある場合、それだけで難題になるものの更に、断面を何枚描いても全てを表現し切れない事態い陥る事がある。本当に悩ましい。最低でも「何かあるからね。」と示し、積算で拾ってもらえる図面に仕上げる必要がある。

この程度の設計要求か!と思わせては安価に見積もられてしまう。高額に見積もる事は出来ないけれど見積もり項目拾い残しは危険だ!という緊張感を与えられる『気持ちのある図面』を気持ち込めるのが手描き図面より遥かに難しいCAD図面に残せるか?

それが出来るのだ。CADで楽になった筈だけれど、日々、取り組んでいる。

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平面と断面の検討、検証を果たして初めて立面図に取り組む事が出来る。

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この住宅設計では斜面が敷地となる。凍結深度といい、地盤凍結の深さより深い位置に基礎構造を設け、冬季間において凍結で浮き上がる事のない基礎高さを設定する必要がある。鉄筋コンクリート造となる基礎工事は斜面なのでベースや底板を傾斜に合わせて斜めにコンクリートを打設するのは困難だ。平坦に打つとしてレベルを最小限にすれば不利な場合は不要な基礎高となりロスを生じる。小まめに斜面に合わせて数多くのレベル設定をしては施工者が混乱してしまう。迷う事のないレベル設定を最小下に求められるか?

立面は概観視、外皮は構造という骨組の上に筋肉や皮膚足る表皮の設定が出来て初めて足る。断熱仕様にも影響するので、デザインのみを考えれば良いや!とは成らない。構造上の安全、不足のない設備をはじめ、十分な仕様を踏まえて初めて立面に辿り着く事が出来る。

ここに至れば仕上げられる図面は但し、一度記せば積算根拠となり不動が求められる。描く線の一本までに根拠を与えられるか?「気持ちを」表すまでに要する労の多さは特出すべきと思う。