4プラ

学生の頃は訪ね楽しんだと思う。昨今は行く理由は無かったかな。道路向かいにあるパルコのプランはとてもわかり易く、買い物慣れしていない私でも目的のお店に辿り着ける。

パルコは中央にエスカレーターがあり、囲う様に「ロ」の字の通路がある。この通路の両側にテナントが並び、一周すれば合理的に全てを眺める事が出来る。イレギュラーはあるけれど概ね全ての階が同じプランで、例えば紳士服や婦人服が階毎に設定されているので迷う事が極めて少ない。つまり、私にも優しい。

例えば周辺のデパートになると売り場は大きく紳士服階ともなれば広大に見える。使い慣れれば場所を覚えるのだけれど、2度と辿り着けないかもしれないテナントがあっても不思議がない。一つのフロアが均質で密に埋まる構成は息が詰まり、やや古めかしい印象を拭えない。

対極にあるのはドンキホーテのフロアだろう。意図的なのでわざとらしさが鼻に突くけれど、アジアの市場の様相で散策は面白い。それこそ二度と辿り着けそうにない場所も生じるだろうけれど、彷徨えるのが良いのだろう。雑多が過ぎ清潔感を失い勝ちなのは悩ましいだろうか。

4プラが興味深かったのは、そういうプランを品よく設えていたからだと思う。何があるのだろう?という散策の楽しさが綺麗に演出されていたのではと思う。今がどうだったのかは定かではないのだけれど。

パルコのプランは合理的ではあるものの、実は何に出会えるかは個々のテナントに任されている。趣向に沿う良質なテナントを集められれば叶う構成で合理的ではあるものの実は効率的に使うのは難しい。行けば最短動線はなく強制的にテナントを巡らなければならない。対して4プラは目的地までは自分のルートを探せる余地があり、建築が演出できる。昨今は百均があったり全てではないとしても、そういう演出が意図されていたのは疑えない。


こういうプランを考える時は何時も、「路地」を思い浮かべる。散策していて路地を見つけたなら吸い込まれてしまう。好奇心をそそる空間は捨て難い。上手に建築に取り込めるのなら、それはきっと楽しいに違いない。少し前に回遊性について記したけれど、限られた建築空間においても袋小路ではなく彷徨えるのは楽しい。路地を陰湿ではなく清潔感を保ち、出来るだけ意図せず偶発的に生じさせられるなら理想的だ。

札幌の中心市街は様々に開発が進み高層ビルが並びそうなのだけれど、散策の自由が失われるのでないかと感じる。市場の様な自由さではなく建物に取り込んで逃がさぬ工夫がなされ、街を開発するのではなく単体の建築内部で完結させるような取り組みになりはしないかと不安だ。

札幌の中心市街を考えると、東京程に人が居るわけではなく容積を求めるのはリスクがあるのではないだろうか。使い切れる容積を面状に広げられればなーと感じる。雪が降り寒い地域で地下鉄の利便のある場所、外に出る事無く彷徨える「路地」の集積で低層に街並みが構成出来るなら。

徒然を日記にして記してみる。

そう言えば学生時代から、昨今は稀ではあったけれど利用していたお店が4プラにあった。地下2階の奥の方にある珈琲スタンドだ。立ち飲みのお店で、街中でちょっと一服と言う時は実に使い勝手の良いお店だった。近年はエスプレッソを頂いたと思う。

素晴らしい場所でも、隠れ家的でもなく、端っこの壁際にあるオープンで仕切りない、人通りのない通路に立地する。そこは淀みになっていて、拭き溜まる様に人が集う。何時行っても適当に人が居た。時間を楽しむような飲み方は出来ないけれど、短時間で一息つきたい要求には抜群だった。近隣含めきっとテナントの方や仕事中にチョットという使われ方だったに違いない。話し込む人はなく、フ~という具合に頂く。特別に美味しいわけではないけれど、缶コーヒーで済ますのでは比べようもなく、私にはチェーン店の珈琲より楽しい一時だった。

ああいう佇まいは4プラならではだと思う。フラっと吹き溜まった時に、そこに珈琲があるのは、とても素敵だ。お店の方とは最低限の会話ではあるけれど、馴染みになれば挨拶はするだろうな。札幌の中では、そこだけが特別だったと思う。

そういう一服も通常は閉じられた店舗空間に閉じ込められなければならないし、暖かければテイクアウトで大通り公園を使うのも良いけれど、そこまでするなら何時ものカフェに行くだろうし。

ヨーロッパを旅した時にカフェを使う時のような勝って良さを感じた。自動販売機はないし、歩き疲れた時にチョットという使い方の出来る具合が似ている印象がある。ああいうお店があちこちにあれば良いのにな。札幌の街中には滞留できる場所が乏しく、正直を言えば疲れる。駅や広場に行けば露店というか小さなブースがあって珈琲やサンドイッチが食べられるオープンスペース、憧れる。

市場や廉売の文化が失われ、コミュニケーションを前提とした商売が敬遠され久しい。スーパーで鮮魚店精肉店がパックした商品が主と言うのも常だ。一言二言でも会話の出来る関係は良い。電車や地下鉄が平気で10分くらい遅れる環境なら、チェって言いながら珈琲を求めるなど出来るかもしれない。ゆとりを削り合理性や利便が優先されると失われるものがある。それを許容するゆとりを建築的にプランできるなら、ひょっとすると「楽しさ」を演出できるのではと思えてしまう。