ABC予想

丁寧な番組で、数学の難問をよりかみ砕いて誰にでも伝わるよう工夫されていた。とても有難い。観たのは『数学者は宇宙をつなげるか? 完全版 abc予想証明をめぐる数奇な物語』というテレビ番組。

昔々ある数学者が気付いた事、これを「予想」として報告をする。後の数学者の中に、これを証明しようと取り組む人が現れる。けれど、証明は非常に困難で未だ達成はされていない難問の一つが「abc予想」なのだそうだ。

常人には予想どころか、何が問題なのかすら理解が及ばない。数学の話は本当に天才にしか理解できそうにない。けれど、とても興味深い。観て残る記憶をたどれば、掛け算と足し算の関係性について、述べられていたように思う。

① A×B=C
② A+B=C

A=2、B=3 とすれば①ではC=6となり、2と3の成分が残る。②ではC=5となり、2と3の成分は残らない。ここに関係性があるのか、ないのか。掛け算は簡単だけれど、足し算は難しい・・・平坦にすれば、ここに端を発する問いで良いのかな? 

数学の特性上、「同じ」と考えるものを「違う」と改めて認める必要があるのだそうだ。これを証明するにはこれまでの数学上には無かった別の世界を切り開く必要があり、近年に「証明」されたとするものの、まるで別世界の解法が謎となり議論が起きている・・・「宇宙際タイミューラー理論」。これが認められれば、歴史的大転換になるともされる。解かれるまでに300年を要したフェルマーの最終定理が2行で証明できるとか。



『数学とは異なるものを同じと見なす技術である』
アンリ・ポアンカレ(1854-1912)

例えば物々交換をする。私のリンゴ3個と貴方のミカン3個を。この時の「3」は同じだ。日常的でもこの認識が欠かせないと思う。そういう感覚で良いのだろうか?

「同じと見なす事が、複雑なものを単純化し問題を解くための強力な武器になってきた。」とも番組では語られていたけれど、数学的に独特な言い回しも多数あり、例えば「曲線上の有利点の問題を、ある空間のコンパクト化の問題へと変更する」等と言われれば、最早何の事が理解が出来ないな。

 

宇宙際タイミューラー理論は「まるで別の惑星から来た論文のようだ」とも語られていた。きっと証明されたり、新しい数学が生じたりしても我が身に変化は無いに違いない。けれど、違う感性の拠り所に還元できるだろうし、なにより最前線の最先端での格闘の物語はスリリングでドラマチックだ。煙に巻かれて興味と興奮を覚えたテレビ鑑賞感想でした。