詳細図

設計者や建築家と言えど実は、詳細図を描ける人は割と少ない。所謂「設計図」とは実施設計時の成果品になるのだけれど、それは積算根拠として必要となる設計資料であり、それでは建築は出来ず、施工者頼みとなってしまう。

設計は「計画」「実施設計」「監理」の3つの業務から成る。施工時に設計通りに建築されているかの責任を担う「監理」の際には勿論、細部までを「実施設計」で描き、それを前提に「計画」が出来るのか?が問われる。

現実には細部は今、何ならネットで出て来る資料を張り合わせる程度でも図面は描けてしまう。何を描いているのかもわからず、それらしい図面は分業社会では十分に可能で、現実の多くの場合はそれ以上は求められず。



とある設計にて、摩訶不思議な『軽量鉄骨造』なる設計に取り組んでいる。あまりに馴染みの無い構造なのだけれど、以前に取り組んだ事があった。『?』な構造に対して、その細部はどうなているのかを解き明かす為に描いた詳細図があったので記す。


■平面部分詳細図
外壁、外壁出隅部分、内壁、筋交い部分を記している。



■断面部分詳細図①
基礎と外壁、建具を含む断面詳細図。



■断面部分詳細図②
外壁、2階床と吹き抜けに面する手摺等の詳細図。



暫く前に描いた図面なのだけれど、こういう図面を描いていた過去の自分に感謝してしまう。1/100スケール程度で描くなら困らず、1/50程度でも誤魔化せるし、何なら1/30でも仕様に合わせて、という具合で図面は描けてしまう程度の経験はある。

けれど、現実に何をどう組み合わせ建築されるのか?を考えると、このレベルの理解はしたい。描いた詳細図は1/5スケール、CAD上では1/1の実寸サイズで検討をしている。この通りに建設されるわけではないけれど、監理の際に職人レベルと議論出来る内容を記している。

何が出来、何は出来ないのか?

ココを解き明かしておかなければ、踏み込んだ設計は出来ない。例によって掲載図面の所要記載事項をボカシているのは、この図書がこの時の実況に応じたもので普遍ではなく、たまたまネット上で見つけて間違って信じてしまう人が現れても困るので、無責任には公示出来ない。


軽量鉄骨は例えば『LGS』など建築では一般的な部材である。木造の好きな私には悩ましい部材で、具体的には構造とも一体で洗練された木造のスケルトンは実に美しい。対してLGSで組まれた内装のスケルトンは継ぎ接ぎだらけで正直、一度も綺麗だと思った事がない。

世の中には軽量鉄骨造も存在するのだけれど、それは木造なみのスパンで建築されるもので、薄い部材の鉄骨は接手も悩ましく、構造設計にとっても不思議らしい。基本となる力の伝達がどこまで出来るのか?仕様に慣れるまでに悩む上に、覚えても次は無いかもしれないし。構造設計はこれまで幾つもお世話になった方々なのだけれど、数値根拠が示される設計故に、計画時では一度も確定的返事を頂いていないな。既に進んでいる今は確信を持って取り組まれているはずだけれど。


マンションのエントランスのデザインをした際は、その細部は下地の軽量鉄骨があまりに不器用で迷わされる事が多々だった。細かな細工を「板金で」となれば更に、どこまで出来るのか?に悩まされた。大工を相手に細部を相談するのなら『木』の自在さをどこまで使えるか?を議論できるのに、軽量鉄骨では直ぐに「出来ない」と応答されてしまうし。目地を一本入れるだけでも悩んだしね。

でもね、そういう労をクライアントには見せられない。設計だけで建設は出来ない。建築は設計者と施工者が一緒に取り組んだ成果。それがクライアントの要望に応えるために。応えられたなら、労は労われる。