BENIZAKURA PARK ART ANNUAL 2020 ②

紅桜公園を二度目に訪ねたのは、もちろん仕事で近所に来たからだったのだけれど、とても興味深い一つがあったから。是非、撮ってみたいと思っていた。それが最終日だった。

■今村 郁子 作

敷地の端にある暗い池に沈められた階段に魅かれた。森の木々に囲まれた池は薄暗く、更にその池の水の底に沈む対象は暗く、昼間でも三脚を構えたくなる程に微か。

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不思議。水盤と水の底の象の揺らぎ、あまりに魅力的で魅惑的な像を確実に体感できる体感可能な彫刻作品。写り込む森を見るのか、水盤を確かめ見るのか、水に沈む対象を見るのか、距離が全く違い計れない。それが陰影で見え隠れする。構えたカメラが何を写しているのか混乱してしまう。

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この写真が一番好きかも。実像と虚像が行き来する現実の象。何を言っているのか?実際に見れば楽しいに違いない。ここの近所の水源地の春、あちこちに水溜りが生まれ見える光景に同じ。どちらも本当に見えるのに距離感を失う現実がある。

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この写真も好きだ。見ている実像が揺らぐ瞬間に得る一瞬の象の美しさ、代えがたい。

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割と実像の写る一枚。明瞭に映り込む水下の階段なのに、写り込んでいる反射の象が一層、実像に関与して深みを与える。こんな方法が実際に使えたなら表現はまやかしの如く豊かに出来るのに。

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実体の写る一枚を最後に。水が厚くなる程(深くなる程)に象はボケてピントは合わない。水盤に浮かぶ落葉、何かの作った波紋が現実を知らせる。