『KYLYN』 昨年11月のこと。

同窓の先輩H氏のJAZZバーを、お誘い頂いたW先輩と訪ねたのは昨年11月の事。H氏とW氏はJAZZ研の仲で何時も濃いJAZZ話が聞ける。私は、わかった風も装えず、まるで何も知らないけれど興味はあるので、彼等の知る際を探る。馬鹿みたいな質問にも子供に聞かせるよう実に丁寧で”熱い”応答を頂け、御一緒するのが楽しい。

リズムなのか仕組みなのか、何かしらの秩序を得るための方法を模索し、出来不出来を許容しつつ、それが何かが崩れていても達成されているなら代え難く、どこに価値を見出し、見出された価値は無知な自分が聞いても、理解出来ずとも感じる事は出来るのか?試す事の出来る貴重な機会だ。

奏者の間違いや不足は教えて頂ければ誰しもがわかる。そうではなくて、その上で代え難いとされる瞬間の価値を感じられるのだろうか?・・・そこは、酔っているので分った気分に浸れるのであった。

この夜も、モダンかモードかコアなJAZZを中心に一頻りレコードで楽しんだ後に流れたのが上の赤いジャケットのレコードだった。その後は私の最も好きなコルトレーンのIMPRESSIONSが選ばれてしまい、帰る事も出来ず改めて腰を下ろした気がする。

この夜のH氏は「まぁーまぁー座れ!」と次々に、気持ち良くあれこれを選んでくれ、終電後も長々と楽しまされてしまったと思う。


突如として挟まれた赤のジャケットのライブアルバムは、坂本龍一高橋幸宏矢野顕子村上“ポンタ"秀一等が参加していると聞いた。はて、何というバンドだったろうか?

便利な世の中、撮ったジャケット写真から画像検索をし答えを得る事が出来た。渡辺香津美の『KYLYN』のLIVEのようだ。 JAZZと言うよりはフュージョンで、毛色の違う音が流れたのに、「あれ?」と気付く。惜しむらくは、自分が何に気が付いたのかが良く分からない。

分らない「未知」への探求は興味深い。音楽特性はまるで無いので、その探求は恐ろしく困難でおそらく、最後まで理解は及ばないに違いない。故に素直に、その時に感じた無垢な問いかけを何時もしているのだと思う。酔った二人は案外にカモだ。バカな問い掛けに何時も、熱く丁寧に議論し始める二人を眺めるのが面白いだけなのかもしれない。

ただ、心に残る瞬間を覚えている。理解出来ない楽しさは否定出来ない。明瞭な謎は興味が失せない。