2020 タイ旅日記 ③ 『 ワット プラケオ 』

タイの生い立ちを理解するのは難しそうだ。紀元前のシルクロードの時代から文明はあった様子だし、「タイらしさ」はあるのだろうか?あるのだろうな。色々な民族、文化や風習があるのだろうし、少し遡れば国境線も様々だったに違いない。

日本の、中でも北海道に住む自分は世界から見れば希少なのかもしれない。北海道も様々に他の地域と関わり今に至るものの、地域を限定して眺め理解する事が出来るように感じている。

首都バンコクの旧市街はチャオプラヤーという大きな川と運河に囲われた地域に在る。川を挟んで3つの重要な寺院『ワット プラケオ』『ワット ポー』『ワット アルン』がある。なかでも『ワット プラケオ』は王宮直属の寺院らしく特別に思われた。と言う事で初日の最初の見学地とした。一番最初に一番だろうお寺を見る。これが、本当に強烈な建築群であった。

f:id:N-Tanabe:20200211042605j:plain初タイ寺院体験。この三つの塔が主たる建築になるのかな?左から「スリランカ」「タイ」「クメール」様式になるらしい。日本のように周囲の山と呼応する景観は望めず、孤高の存在として聳える事を選び「塔」なのだろうか。スリランカもクメールも知らないので生粋の様式なのかタイ式の理解なのかは分からないけれど、印象は理解出来る。仏教の伝来か憧れか、他の地域の様式も取り込む懐の広さなのか、不思議な気もする。日本の古い建築にも唐や隋などの影響の強い建築はあるものの、そのままを持ち込んだというよりは影響を受けたという方が適当に思える。唐風には見えても「中国」に見えるとまでは言えそうにない。寛容なのか、そのあたりの感覚は大陸的なのか、面白い。

 

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その向かいの巨大な建築はタイ式。タイには様々な様式があるらしく、王朝が変わる、根差した地域が変わる際に変遷しているようだ。ここは江戸中期に建立とはwikiで読んだけれど、たくさんある建築の建築時期は各々違うのではと思う。

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スリランカ様式の仏塔、その壁の詳細。驚く事に金のモザイクで埋め尽くされる。曲面と平部分で菱状と平行で貼分けはあるものの、徹底して「金」だった。

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この寺院建築に際し、アンコールワットに強く感銘を受けたらしく、巨大で精密なアンコールワットの模型が残されている。googleMAPの航空写真で確認出来る程に大きい。本当は、アジアの寺院を見るなら「アンコールワット」を目指すべきだったのかもしれないな。模型でも凄い迫力であった。

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つい見入ってしまう。床や基壇部分はタイ産の大理石が使われている。建物はアンコールワットの様に彫刻された「石」を積み上げるわけではない。恐ろしく小さなパーツかモザイクタイル、貝やガラスを埋め込み隙間なく装飾が建築全体を覆う。巨大な建築の隅済みまでが徹底して小さな手作業で覆い尽くされている。しかも、金だ。

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小さなヒダ状の金のパーツはガラスか貝か宝石のように輝くピースが埋め込まれ、それが幾重にも重なり積み上げられ、ある部位はモザイクタイルが綺麗に嵌め込まれ・・・

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それが一本の柱になる。柱は天に行く程に細くなり印象的。

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この台座の中央は貝を使っているのではと思う。この細工が建築の一部とは恐れ入る。工芸品の域の仕事が巨大な建築を覆う。

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タイルも使われる。工業製品ではなく手描きの一品ものに違いない。これも柱の部分を撮ったもの・・・

f:id:N-Tanabe:20200204115558j:plain柱になる。見上げる程に高い柱が全て、そんな仕事で覆われている。

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ある中規模の仏塔の足元は、「鬼」と「猿」が支えていた。

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3段構えの屋根、屋根は色付きのピースが葺かれている。例えばそれは一枚一枚出資者の名前が裏に書かれているとか、いないとか。中央に立つのは鬼かな。

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寺院基壇の側面はタイル張だった。これも一品ものを丁寧に張られている。精度は悪く歪んではいるけれど、それ故にこの巨大な建築が実に丁寧に築かれているのだと知らせてくれる。

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聳える山の様な、綺麗なプロポーションの建築。色も鮮やか。

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何気ない東屋や門も一々が物凄い仕事量で出来上がっている。

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これは壁は欧州風で屋根はタイ風。和洋折衷の如く、タイ洋折衷建築だそうだ。見えている学生は修学旅行だろうか。

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唯一、軒裏だけは張る事が出来なかったらしい。赤地に金模様の仕様。


非常に面白い経験だった。ここまで徹底して細工で埋め尽くされる建築は見た事がない。しかも「金」が多用される上に光り輝く素材も組み合わされ、正に「キンキラキン」だ。それが白昼の大きな陽の元に曝されている。金を陽に曝し眺めるとは想像した事もなかった。

金閣寺の事例はあるものの、直近でお寺を設計した際に考えた金の用法は暗闇に用いる事だった。日本にある陽の強さではここまで輝く事は出来ないのだと思う。白々しくなるに違いない。タイでなら強烈に強い陽の光を浴びて金は強く輝けるのか、綺麗だなと思えた。