2020 タイ旅日記 ㉑ 好きな写真を。

好きな写真を集めてみた。

 

『ワット ジェットリン』の奥の池、竹の床の怖い橋、その夕景は特に印象に強い。これを観るために来たのかと思わせてくれた。出合えていなかったなら無駄な旅だったと思ったかもしれない。

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消灯!という位に夕方は僅か。北海道で知る夕方、平野の十勝は割と見切り良いけれど、山間の町では楽しむ時間があるように思う。その時間差は僅かなのかもしれないけれど短く感じられた。綺麗な夕陽の、遠くにある陽が大気を長く透過して届く色、灯る行灯、それが池の鏡面の水盤に映える。

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『 ワット プラケオ 』はタイの誇りに違いない建築、寺院なのだと思う。その一角に残るアンコールワットの巨大な模型、時の権力者が出会い感動し、自分の国に建築をと思い立った時に規範となるものとして模型までを製作した、のかな?・・・オリジナル性や唯一性ではなく、品質を求めると模倣も辞さず、出来得る限り良いものをと取り組んだ成果がこの寺院に違いない。このクメール様式の他にスリランカ様式もタイ様式に並べた主たる眺めは壮観でもあった。その覚悟を示す一枚。

f:id:N-Tanabe:20200211042544j:plainこの寺院に投入された仕事量は圧倒的だ。観た事のない仕事を目の当たりにし、私はひどく感動をしてしまった。工芸細工の些細な一々が目に留まり、足が止まり、しげしげと眺めた。

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そんな仕事が建築物全体を覆う事があるとは想像をした事もなかった。

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主たる建築では無くとも、その勢いはとまらず、まるで鱗でも貼るかの様に建築を包む。一つ一つの工芸を建築を見越して製作し取りまとめたとすれば、設計にどれだけの時間を有した事か、想像を絶する。

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『 ワット ラーチャボピット 』は中でも費やした労力、掛けた費用、得た成果のバランスは抜群に優れていると思う。バンコク3大寺院に隣接しつつも静かな場所、円を用い境内の中に建築内部空間的な重厚な外部空間を持ち、その構成を含め豊かな建築だった。

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プラケオとは違いタイルが活躍する。しかも工業製品ではなく一枚一枚を手書きで焼いたものに見える。目地で調整をするとしても規格の揃わぬものを、やはり部位毎に使い分けられていて、設計者の仕事量を思うと気が遠くなるライフワークに思える出来栄え。世の中にこのような建築があるのだと知る事はとても重要な事だと思う。

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チェンマイは旧市街中央にある仏塔が印象的な『ワット チェディルアン』。見事に一枚の写真に収めたものの、現実はピラミッドかと思う程に大きい。エジプトには行った事がないので本物は知らないけれど。この量塊は密実にレンガが積まれた重さ。チェンマイは地盤が良いに違いない。積み木ではないけれど、積み上げる行為は基本的な欲求かもしれない。それがこの規模に至ると、石ではなくレンガであっても圧倒的な存在感を示す事が出来る。何故これを建てたのか?という疑念すら浮かばせぬ迫力があった。

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『ワットプラシン』の金色の仏塔もまた強く印象に残る。モザイクではなく面として金が使われ、強く大きく明るい陽の下で金を見る不思議は有難いという素直な感情を引き出すに十分な存在だった。象まで金だし。黄金の魔力を垣間見る。

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そのワットプラシンのある部分を眺めると、確かな工芸細工が施されている。貝を埋め磨き作られたであろう細工の見事さは、本当に綺麗で見惚れてしまった。

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チェンマイ郊外には朽ち果て放置された、既に遺跡のような建造物も少なくない。僻地の暇な場所である今ではあるけれど、嘗ては知るべき見るべき拾うべき事があった事を知らせてくれる。

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チェンマイ『ワット チェンマン』の本堂の一枚。ラブホテルでもこんな色彩は用いまい。赤が綺麗に見える程強い日差し、しかも照り返しで浮かび上がる地色は鮮やかにして良く沈み、金が映える。大理石の床と相まい印象的な光空間を見る事が出来た。小さな窓なのに室内は十分な静けさ、影の誘う涼、瞑想に相応しい空間がある。

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『ワット ロークモーリー』チェンマイ郊外のお寺、何かしらの法要のために設えられた中空の糸の先は仏像の手に至る。実に興味深い仕組み。

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『ワット チェットヨート』の荒廃した廃墟にはロマンを覚える。こういう彫像、レリーフをもっとたくさん見たいと思えた。残る像だけを見ても視線はそろわず、どこに居てもどれかには見られている気がした。

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同じチェットヨートにあるヴォールト構造のある仏塔。開口から透けて向こうが見える。内に空間を孕む瞬間に建築を実感する。新鮮な体験だった。

f:id:N-Tanabe:20200215041909j:plain最後もチェットヨート、その蝋燭台を。どうしてこうもカラフルな色が使われ、それが不気味にも関わらず信仰の厚さを楽し気に想像させてしまうのか。

 

 

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