2020 タイ旅日記 ⑯ 『ワット チェットヨート』その1

チェンマイで特に楽しみにしていたのはここ『ワット チェットヨート』だ。廃墟にロマンを覚える自分には見ておかなければならない場所と思えていた。ここに来るには徒歩では厳しく、よって自転車を借りる。えらく忙しい幹線道路を渡らなければならず困惑したけれど。札幌で例えると、信号の無い環状線を渡るくらいに怖かった。ちなみに帰り道は街よりの巨大なシネコンのあるデパート?の信号機のある交差点を渡った。

ここは道路向かえにトヨタの工場がある。気付けば日本名の企業が多数あった。大きな敷地か境内か、学校も併設される寺院は「寺町」を形成していて、境内外の道路には露店が連なっていた。若いお坊さんがそこで昼食を購入しウロウロしていた。

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ネットで見つけた画像はこの仏塔だった。写真中央右下に人が居る。比較すればその大きさが伝わるだろうか。レンガをどれほど積めばこの巨大な重量級の建造物が出来るのだろう?チェンマイに流れる川は「ピン川」これはチャオプラヤー川の支流であり、やがてバンコクまで続く。これらの川に洗われて出来た平地に都市は築かれている。きっと少し掘れば川石がゴロゴロとする地盤の良い場所に違いない。明らかに古い建造物が今も在るのは地盤の良さ故なのだと思う。

仏塔としてみれば、棟が幾つも立ち並び他には見なかったものだ。ワット チェディルアンのピラミッドの様な巨大な仏塔は別として、形式に依らず特別な意図を持って建立したかのよう。或いは、形式の定まらぬ頃の自由さかもしれない。

 

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レンガを積み、表層を漆喰で整え、壁面にはレリーフが施されている。正面の彫像は多くが崩れ又は破壊されているけれど・・・

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極めて良く残っている部分もあり、しげしげと眺めた。竣工時は綺麗な色を付けるなど装飾されていたのかもしれない。

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積み上げる、という仕事のみならず、きっと何かの物語が描かれていたに違いない。僅かでも見る事が出来て嬉しい。これまでは象や蛇しか見れなかったから。

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ここには崩れた仏塔が他にも多数が存在している。正面のものより大きなものも小さなものも多数が広い敷地に点在し、壮観だった。全てが現役なら壮大な寺院だったに違いない。旧市街、当時の市街から見れば随分離れた立地にも意味はあったのかどうなのか。この仏塔はかなり大きなもの、天に聳える姿は圧巻。

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興味をひかれたのは小さめの一つ。ヴォールトを使い内に空間を持つ仏塔。仏塔ではないのかな?室内中央には仏像がある。これまで見てきた仏塔はレンガを積み上げた重量級の重さを持つ重厚な存在ばかり。内に空間を孕むと一気に軽さが見て取れる。付け柱は本当に機能する柱に近いし、ゴシックかロマネスクの教会を思わせなくもない。
組積造は構造上開口を開けるのが難しい。壁は積み上げ屋根は軽い木で、というケースはある。これは室内とは言え人の居る事の出来るほど大きなものではないので、単純なヴォールトを用いただけだろうけれど、透かして建物の奥が見えると言うのは気持ちが良い。

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巨大な仏塔とヴォールト天井のある小さな仏塔、その手前に本堂、これが東西の軸線上に配置されている。

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その本堂は、今は無い。基壇部分のみが残る。立て直すべく整理までしたのか、或いは建てる前に計画がとん挫したのか。今は基壇上に小さなお堂が設けられていた。このお堂にはご本尊が存置されているのかもしれない。全て私の想像を書いているだけなのだけれど、確かな人の痕跡を目の当たりにすると、つい想像は膨らんでしまう。きっと多くの物語があったに違いない。

 

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小さな仏塔、積み上げられたレンガを観ればどれも角が丸くなるほど風雪に耐えてきたらしい事が分かる。雪はないか。過ごした時間の長さを容易に感じさせてくれるというのは凄い事だ。正直、今の自分の身の回りの環境にはこういう時間を内包した存在は見当たらない。

 

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最初に見た仏塔は東西に仏像があり、東側は洞窟状のお堂になっている。写真でわかる様に屋上にもお堂があるようだ。

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その洞窟状のお堂内部。

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内陣が組まれご本尊がある。ここも、たくさんの仏像があり、中にはご本尊に手を合わせる仏像までもある。はじめてみた。