事務所登録の更新

建築設計事務所の開設には登録が必要であり、講習を受けた管理建築士を要し、私の場合は一級建築士事務所として登録している。5年毎に更新が必要で、それを本日済ませて来た。5年ぶりの書面は・・・不慣れで大慌てではあったのだけれど。登録費は初めて郵便局の自動振り込みを使い慌てるし。

私の場合は札幌の建築士事務所協会へ届け出る。やや遅ればせながら業報告書も一緒に届け出た。こちらは毎年の事で、閲覧の出来る資料ともなる。


昨年まで訪ねた協会は大通りにあるビルヂングで、それは趣深い建物に在った。今は駅北の新築ビルに移ったのだけれど、新しく奇麗ではあるのだけれど、趣きはなく事務的になってしまった印象は拭えない。

窓口の方は親しみのある方で、年に一度程度お会いするだけではあるけれど安心する。これで人が違っていたら不安を覚えたに違いない。しばしお話をしたものの、ビルヂングには15年程居たのだとか。掃除の事を思い入れ深くお話されていた。

初めて事務所を登録すべく訪ねた際は印象に強く残る。こんなビルヂングへ来る事になるのかと感慨深い思い出。特に印象に残るのがこの手摺だった。


ピッカピカの真鍮製の手摺は、いつも見事に輝いている。この時、メンテナンス掃除をされている方が居て、少しお話をして手を止めさせてしまった。磨き粉で丁寧に全てを磨くのが日課だったはず。あまりに綺麗で手を触れて良いのか悩むと伝えると、「どうぞ遠慮なく。」と。

エレベーターは中途で変わったと思うけれど当初は古めかしく重厚だったと思う。遅いのだけれど大切にされている設備だった。ただ、帰りは何時も階段を下りた。遠慮なく手摺を触り。

人の真心が伝わる。

ここに目的を持って訪ねる私は遠慮なくこの手摺を触る権利があるのだ!といつも触らせて頂いた。真鍮に残された私の手の痕跡は翌日には綺麗に無くなっているのだろう。ここに通える機会のあった事は忘れない。




恐らくは、唯の古いビルに過ぎない。けれど、新しいか古いかは問題ではなく、丁寧にメンテナンスされ常に人を招く装いの整う様は余りに素敵だった。どちらかと言えば、その装いが大切で心に響く。

今は少々忙しくしていて振り向けば図面が散らかる私のアトリエ・・・磨き粉で真鍮を磨き人を静かに待つ!とまでは言わないけれど、掃除しよう。出合ったビルヂングの清掃の方、滅多にお目には掛からず縁の下の方だ。当然、会わぬのが常になるのだけれど、訪ねた時のあの心地良さは心から見習いたいと思う。