得体の知れない計画はあまりに大きい。


都心の開発なら容易に越える規模にはなるだろうけれど、主戦場を『住宅』とする私は基本的に私自身が隅々にまで注意を届かせられる規模の設計をしている。過去に経験した最大規模で言えば、デザインしたマンションなら「基準階」があり、そうではないものの、懸命に設計した建築の5倍は大きい計画に取り掛かっている。通常設計で言えば・・・100倍以上も大きい。必要諸室は1000㎡を越えていたりする。

この設計は後に報告する機会があるかもしれないし、ないかもしれない。

遡る事数ヵ月前、事前の計画時に取り組んだ証を記して置く。経済性が最優先となる事案は効率的で合理的に取り組む。その上で何が出来るか?初めての挑戦はスケッチや平面等の計画ではなく、まるで異なるエクセルを設計ツールとして計画をした。

要望諸室を眺めると一見、一級建築士試験の課題のようなのだけれど、諸室の数は3倍はある、60室を越える。「パズル」とするのは白地のジグソーの如くで、これを如何に設計の土俵に上げるかを思案した結果、最有力なデザインツールが表計算ソフトであるエクセルであった。一覧にすると遠慮なくツラツラと要望諸室が並ぶぞ・・・



構造規模を予算事情を勘案して想定、ここでは3層で構成するとして諸室の性質を区分し、その区分毎に群を構成させレイアウトを計画する。



そのレイアウトは幾多に展開し、キリなくツラツラと続く。その中で綺麗に整理出来た表蘭を選び基にし図面に向かい、そのパズルの実践に取り組む。初めて取り組んだ設計スタイルは的を射る成果を得た。


通常の設計で考慮するスケール感等は当然ながら、優先要望についても様々を考察する。その上で得たプランはかなり見事で、それが極めて短期間で制作したとは思われない完成度だった。あまりに完結なプランはクライアントの要望までも整理してしまう程。

群とはグループ、色分けした計画図は実に綺麗に整理されていて、崩すのを躊躇わせるに十分だったに違いない。

そう言えば先に記したお寺の設計時も同じで、最大行事を要望のままに設計すれば5割増しの規模になる程だった。

規模が大きくなると法的制限は増し、CADで作図を始めると難題となったのが防火区画と避難階段だった。避難経路距離を満たせなければ階段は無数に増え規模は大きくなる。その度にエクセルに戻り再レイアウトを試み、より効率的な方針を見つけては図面で実践する事を繰り返し、最小限の経路と階段数で構築できる建築を提案する。

まぁ、果たしてどう変遷するのかは今後の打合せ次第。請ける以上は徹底的にと心新たにする。設計は、どのような要望であっても楽しい。終えた後に充実していたと記せる設計の渦中では心身共に苦しいのが現実なのだけれど、耐える事で応える。