椅子

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ヤコブセンのセブンチェアは定番とも言える名作。
初めて座った時に「なるほど」と実感させられた。
今はリプロダクト製品も数多く手頃でもある。

クライアントに提案したところ、あれこれ試され、
本物とリプロダクト製品を一先ず購入されていた。
私自身、双方の違いは比べた事がなく興味深い。
結論から言えば、誤差かもしれない。

積層の合板を曲げ加工し座面と背が作られている。
そのしなり具合がスチール製にも似て心地良い。
リプロダクトはその厚みが違っていたり、脚部の
スチールパイプの径が違っていたり誤差がある様。
これは、手に入る規格に合わせているのだろう。
最も違うのは合板の加工具合。丸みのある部分、
手間を惜しまず仕事をすれば本物に近づくものの、
適当に終えている印象は否めない。
ただし、比べなければ無視出来るかもしれない。

カッシーナの扱う名作家具をと考えた事がある。
聞けば、イタリアにも様々な家具メーカーがあり、
より良い製品を製作出来る所と契約するのだとか。
契約出来ない所はリプロダクト製品として販売し、
そこに辿り着けない技量のものは安物として売る。

座にウレタンを使っているものは、最初は似た
心地があっても経年で劣化してしまう安物もある。
安物の中には明らかに手間を要するディテールを
疎かにしているものもあって、悩ましい。

その点、数多くの製品が出ているセブンチェアは、
競争もあると思われ、やはり狙い目かもしれない。
最終的には自分のニーズに合致するかどうか。
自分のニーズ、要望を突き詰められるかどうか。
本物が否かは実は問題ではなく、自分が何を求めるか。
高い要望を見出させるなら、或いは正規品を越える
何かを要望するに至れるかもしれない。
半世紀を越えてある名作家具に要望出来るような
繊細かつ創造性ある要望を見出せるだろうか?

椅子は生活の中で常に側にあるもとのなる。
履いている事を忘れる靴、いつも思うの一つなのだ
けれど、座っている事を忘れさせる椅子、
出会えると、長居が出来る。長居出来ると、
その場が楽しく感じられるはず。少なくとも、
そこに居る事に苦痛を覚える事が解消される。

回転の早いラーメン屋はわざと心地悪い椅子を選ぶ。
長居させたければ、心地良いものを選ぶべきだろう。


足腰が弱ると椅子へとニーズは移る。
フローリングの床ならやはり椅子は基本となり、
ダイニングではテーブルに向かう最に用いられる。

寛ぐ際はソファーへという展開はあるものの、
19/1/30「家具体験」に書いたHUKULAのソファや
北海道で体験出来るならカンディハウスの家具の
ような心地を考えたものなら素晴らしく、
マンションサイズを優先したものは何となくとなる。
身体に触れ支え、時に感じさせずに長時間を共に
する道具を選ぶには、自分自身の感覚が求められる。

比較する、座り比べてみれば、なるほどと思う事が
きっとあって、それは必ずあるもので、面白い。


写真は、出来た住まう空間での一枚。
未だ陽の残る頃、ダウンライトの下で。